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修学旅行参加者の声

立命館中学校

修学旅行実施時期:2022年5月下旬
キーワード:
  • 平和学習
  • サンゴの保全
  • 首里城復興
  • 事前学習

立命館中学校では、沖縄研修旅行(修学旅行)の事前学習として学校内で沖縄の物産の販売を行い、その収益を沖縄県のために寄付していただきました。

この取り組みについて、立命館中学校の生徒を代表して、3学年の今里渚々子さん(学年協議会委員長)、猪子詩さん(沖縄物産展代表)、教諭・松室友香理先生にお話しを伺いました。

沖縄を修学旅行の場所に選んだ理由は何ですか

▶松室先生

例年中学2年生の研修は平和学習がテーマです。

沖縄にとっては本土復帰50年という大きな節目。このタイミングでしか学べないことや、戦争経験者・体験者から話を聞ける機会も年々減ってきている状況で、行かない選択肢はないのでは?となりました。

中学2年生の2月に実施予定でしたが、コロナ禍が収まらないなか学校判断も苦慮しました。保護者説明会も何度か実施。いったんコロナがおさまる時期が来るかも、という期待をもち中止ではなく「順延」しGW明けの様子を見て判断するというかたちをとりました。

保護者のみなさんに「キャンセル料が発生するかもしれないが、ギリギリまで待ってもらえないか?」とお願いしたところ、生徒248名全員の保護者のみなさんに同意いただけたのが一番大きかったです。

修学旅行を振り返っていかがでしたか(思い出)

▶今里さん

コロナ禍の影響で、今回が中学生になってはじめての研修旅行でした。

学年委員長として、「皆がちゃんと指示どおり動いてくれるか」「平和学習の時に話をきちんと聞いてくれるか」など不安がありました。でも、いざ始まってみると、楽しむところは楽しむ、真剣に聞くところは真剣に聞いて学ぶ、というメリハリをしっかりつけて生徒全員が行動できていたので、この学年はすごいなと我ながら思いました!

1日目の読谷村でのお話と2日目の夜に戦争体験者の方から聞いた平和学習のお話が何よりも心に残っています。沖縄戦に関する動画は小学生の時も何度も見たし、私自身家族旅行でひめゆり平和祈念資料館に行ったこともありますが、それよりも当時の悲惨な状況などを感じとることができました。沖縄研修旅行に行けた学びがそこに一番あったかなと思います。

▶猪子さん

平和講話の講師の方が「こんな学年今までになかった、こんなに真剣に聞いてくれてありがとう」ととても褒めてくださって嬉しかったです。いろいろ考えて行動したのが良かったなと思えました。

今里さんも言っていましたが、体験された方から聞いた話は声色、熱量、目から感じるものが本当に全然違いました。動画は、その時の映像を見られるので、そちらも大切な資料だと思いますが、動画からは感じ取ることができないものを感じられました。行って良かった、聞いて良かったと思いました。

ほかに修学旅行中に楽しかったことがあれば教えてください

▶今里さん

国際通りに行きましたが、いろいろなお店があって楽しかったです。海ブドウやかき氷、ブルーシールアイスクリームなど沖縄の食べ物が売られているのを見て、まさに沖縄!と思い楽しかったです。

▶猪子さん

平和研修の後にタクシー研修を行いましたが、運転手さんと「時間が余ったけどどうしたらいいか」とか、「次ここに行きたいけどどうすればいいか?」などを話しました。運転手さんがザ・沖縄の人!というイメージでゆったりしていて面白くて優しい人でした。文化だけでなく沖縄の人と話す機会があったのが心に残っています。

実際に沖縄での生徒さんを見てどう感じましたか

▶松室先生

生徒のリーダー層がしっかり育っているなと感じました。本校は「自主自立」の学校。基本的に民主主義で動いていて、教員だけではなく生徒たちの意見も聞きながら物事を進めています。

班別行動や行程中のルール、お小遣いの金額も全部生徒たちが決めました。例年お小遣いは3000円~5000円が多いですが、自分達で根拠データを使って提案・交渉し、今回は7000円に設定できたことで、それにとても喜んでいました。

生徒たちは、自分達の発案がすべてダメと言われるわけではなく、良いこともだめなことも根拠を示しながら受け入れられたり断られたりすることを知っています。

このような学校方針の部分を学び体感してくれたのが一番よかったかなと思います。

どんな事前学習を行いましたか

▶松室先生

社会科の時間や道徳、HRの時間で平和学習を行い、深く知見を広げられたと思います。映像を見たりワークシートを使ったり。平和とはどういうことなのか?今から自分達が担っていく日本をどうしていったらいいか?ということを考えました。

研修旅行が一度延期になったことで、平和について考える時間が例年より長くなったため、改めて平和のことを考えられるいい機会となりました。

▶猪子さん

沖縄の物産を仕入れて、校内で販売しました。

職業体験がコロナ禍でできなかったことと、沖縄研修旅行を前に沖縄の魅力をさらに知れたらいいなと思い、先生たちへ沖縄物産展を提案しました。

私の発案でプロジェクトが始まったので、沖縄物産展プロジェクトの代表としてリーダーの役割を担いました。

物産展について教えてください。実施に向けてどのように準備しましたか?

▶猪子さん

当初2月に沖縄研修旅行の予定だったので2月から組織図などをつくり準備していたのですが、旅行自体が5月の実施となったため、物産展も5月に実施しました。
有志約10名と学年協議会のメンバーあわせて24名でこのプロジェクトを行いました。
会長と社長が3人、社長、副社長、営業、広報、社員など会社に見立てた役割分担を行いました。

▶今里さん

私は3日間とも副社長として動きました。

仕入れはどのように行いましたか?

▶松室先生

生徒は京都だけでなく大阪や兵庫など多方面から通っているため、どのあたりに沖縄のショップがあるかなどの情報を生徒から収集しました。
わしたショップさんにはとても協力してもらいました。2月に1回延期もしましたし、5月の実施判断もギリギリまで待っていただきました。最初の発注は2トントラックで運びました!

実際の物産展はどのような様子でしたか?

▶猪子さん

3日間実施し、1日目は1年生へ、2日目は2年生へ、3日目は3年生へ販売しました。
1年生にはジュースがよく売れました。高学年になるにつれて、ラー油チップスなどのスナック類やじゅーしぃーの素が売れました。学年によって売れ行きが違ったことが新たな発見でした。
特に1年生のお客さんが多くて。1学年8クラスありますが、半分くらいの方が来たので、およそ360人が来てくれて、売り切れました。

▶今里さん

想定していた以上にたくさんの生徒が来てくれました。途中で追加発注をしたくらい!1年生への販売で3年生の分まで売り切ってしまうほどでした。楽しかったです。

▶松室先生

お昼休み時間の約30~40分間での販売。在庫が余ったら教員間で買い取らないといけないと思っていましたが、売り切れたのを見てびっくりしました。
生徒たちは、1年生・2年生・3年生で在庫を均等割していましたが、1年生の在庫が売り切れたのを見て、「3年生の在庫を投入して売り切ろう!」と判断したのがえらいなと思いました。3年生が買えなかったとしても、沖縄に行けると信じて、後輩たちに売ってあげようという優しさにびっくりしました。
追加発注するのも生徒で手分けしたり保護者の方に車を出して頂きました。

物産展の売り上げは、首里城に象徴される歴史と文化の復興(首里城歴史文化継承基金)とサンゴ礁の保全のために寄付していただきました

▶猪子さん

何のためにこの物産展をするのか考えたときに、募金や寄付をきっかけに沖縄だけじゃなく、日本の、サンゴの問題や首里城の焼失のことを知ってもらえたらいいなと思い、売上の寄付を提案しました。
サンゴのことをあまり知らない人が多かったので、全校集会で中学全生徒にサンゴの保全の話をしました。私自身サーフィンが好きでよく海に行くのでサンゴの問題が身近にありました。(サンゴに有害となる)日焼け止めなどにも気を付けてほしいという思いがあり、みんなの前で話しました。真剣にみんな聞いてくれました。
売り上げは寄付することを事前に周知したうえで物産展を開催しました。

最終的に、首里城歴史文化継承基金へ28,345円、サンゴ礁の環境保全のために47,945円寄付しました。

(守礼門前にて。首里城歴史文化継承基金への寄付金贈呈式の様子。)

物産展の開催で大変だったことはありますか?

▶猪子さん

何を仕入れるか決めるのが大変でした。みんな個人の好みもあり、「これが良いんちゃうか?」「それはあんまり売れへんちゃう?こっちの方が売れるってー!」というような意見のすり合わせが大変でした。
物産展の1週間前に仕入れた物が届きました。意思疎通がうまくいかず梱包内容や値段シールを貼るのを間違えて全部貼り替えたり。ハプニングもたくさんありましたが、最後にはチーム力も高まり団結しました。一つのものを成し遂げる力がついたし、みんなでやりきったいい思い出になりました。

物産展を実施してみて生徒さんの様子は?

▶松室先生

中学校で物を売るというのは、文化祭なども含めこれまでできなかったので、新たなことを成し遂げてくれたと思います。中学生が金銭的なことや商品を扱うのに異論もありましたが、生徒たちが企画書を書いて、説得材料としてメリット・デメリットも考え、またきちんとリスク管理したこともあって、完成度も高かったです。
保護者の方も旅行に行けていなかった状況も一つ影響したと思います。保護者の方へ物産展のことを通知したところ、「これ買ってきて~、と親に頼まれて買いに来ました」という生徒もいて。保護者の方も含めて物産展を応援してくださったのかなと感じました。

3年生の事前学習は平和学習ばかりでした。戦争の話ばかりで少し辛さも感じていたと思いますが、沖縄に行ったら学びつつ楽しむのも大事だ、ということを物産展で感じられたのではないかと思います。
2年生は2月に沖縄を訪問しますが、自分達も行けるんだ!という気持ちになったと思います。

沖縄修学旅行を通していかがでしたか?生徒さんへこの経験をどう生かしてもらいたいですか?

▶松室先生

コロナの影響で研修旅行がずっとできず、ようやく行けるとなった年だったので、沖縄が成功しなかったら次の研修旅行が中止になるというプレッシャーも感じながらの旅行でした。

誰も発熱せず、感染せず。全員が健康で行って帰ってこられたのが一番よかったです。

今後生徒が社会に出たとき、様々な困難な状況にぶつかるかと思います。今回の研修旅行を通し、根気よくやれば何か成功に導く可能性があるということ、自分たちは無限大の可能性を秘めているということを感じてくれたと思うので、粘り強く社会に貢献していってほしいと思います。

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